
経営陣が海外に居住したまま進める日本進出:会社設立と事業体制の構築
日本市場への進出にあたり、創業者や経営陣が最初から日本に居住する必要があるとは限りません。既存のチームが海外で業務を続けながら、まず日本の顧客ニーズを把握し、パートナーとの関係を築き、あるいは日本法人を設立する場合もあります。
会社設立、現地での事業運営、そして日本で暮らし働くという判断は、それぞれ関係していますが、同時に進める必要はありません。全体を見据えて計画することで、今必要なことと、将来に向けて準備すべきことを整理できます。
最初に考えるべきなのは、「現段階で、日本でどのような業務を行う必要があるのか」という点です。
事業上の必要性から考える
まず需要を確かめたい企業と、現地での採用やサービス提供を始めたい企業とでは、必要な体制が異なります。進出形態を選ぶ前に、次の点を確認しましょう。
- まだ市場調査の段階か、それとも事業開始を準備しているのか。
- 顧客や取引先は、日本法人との契約を必要としているのか。
- どの業務に現地の担当者が必要で、誰が担うのか。
- 将来、創業者や経営陣、従業員が日本で働く予定はあるのか。
これらを整理すると、最初に取り組むことと、現地体制を拡充するタイミングを判断しやすくなります。
現在の段階に合った進め方を選ぶ
市場を調査し、パートナーとの関係を築く
顧客へのヒアリング、展示会の視察、販売代理店や業務提携先候補との面談は、日本に独自の事業拠点を設けるべきかを判断する材料になります。
提携にあたっては、誰が顧客と契約し、商品やサービスを提供し、現地の問い合わせに対応するのかを明確にします。販売や日本での活動を始める前に、その事業モデルに関係する登記・登録、税務、規制上の要件を確認することも必要です。
市場調査や情報収集などの準備活動には、駐在員事務所という選択肢もあります。ただし、販売活動はできないため、支店や子会社とは役割が異なります。
経営陣が海外に居住したまま日本法人を設立する
日本で顧客と契約を結び、その後の事業拡大に向けた基盤を整えたい場合には、日本法人の設立が選択肢となります。
株式会社(KK)や合同会社(GK)の設立登記については、代表取締役または代表社員が日本に居住していることは要件とされていません。そのため、創業者や経営陣が海外に居住したまま設立を進めることは、原則として可能です。一方、外国会社の日本支店では、日本における代表者のうち少なくとも1名が日本に住所を有し、居住している必要があります。
設立できるかどうかに加えて、日々の業務をどのように運営するかを考える必要があります。
現地のチームと頼れる窓口を整える
事業モデルによっては、海外チームが現在の拠点を維持しながら、日本の従業員、現地の経営担当者、外部パートナーが業務を支える形も考えられます。
顧客対応、仕入先との連絡、書類の処理を誰が担当し、急ぎの案件を誰が判断するのかを決めます。各担当者には、役割に応じた権限も必要です。事務作業を外部に委託しても、それだけで経営責任まで委託先に移るわけではありません。
設立手続きと事業運営をあわせて準備する
必要書類と資本金の払込み
創業者や親会社が海外にいる場合は、現地で取得すべき書類と、署名証明、公証手続き、日本語訳の要否を早めに確認します。必要な書類は、設立形態や関係する個人・法人によって異なります。
資本金の払込みにも事前の準備が必要です。株式会社では、会社名義の法人口座がまだない設立登記前に払込みを行います。そのため、選択した設立手続きで利用できる口座、口座名義人、払込みを証明する資料を確認しておきます。設立後に事業用の法人口座を開設する手続きとは、別の段階です。
銀行口座と決済
会社を設立したからといって、法人口座を必ず開設できるわけではありません。銀行は独自の審査を行い、事業内容、実質的支配者、財務状況、口座の利用目的などを確認します。要件は金融機関ごとに異なり、申込みが認められない場合もあります。
候補となる銀行について、代表者や申込担当者に求められる条件を早めに確認しましょう。事業を説明する資料を準備し、追加の照会に対応する時間も見込んでおきます。国内の入金受取、仕入先への支払い、海外送金など、必要な決済機能を整理することも大切です。
所在地、事務体制、予算
所在地は、予定する業務に合うものを選びます。郵便物を誰が受け取り、対応するのか。会議室や執務スペースは必要か。銀行の要件や、将来の在留資格の計画にも合うか。こうした点を確認します。
設立から売上が安定するまでの費用も見込んでおきましょう。オフィスサービス、記帳・会計、事務管理、採用予定の人員などが対象になります。取りまとめる担当者を決めることで、海外の経営陣も期限や費用を把握しやすくなります。
誰が、いつ日本で働くのか
日本法人を所有・設立したことだけで、日本に居住し、働く権利が得られるわけではありません。在留資格は、本人とその実際の業務に応じて検討します。就労に関する在留資格には、事業の経営・管理、専門的な業務、一定の要件を満たす企業内転勤などの区分があり、予定する役割に基づいて要件を確認する必要があります。
短期の出張は、別に考えます。会議、商談、一定の市場調査などは「短期滞在」の範囲に含まれる場合があります。ただし、日本で就労したり、収入を伴う事業を運営したりすることを一般的に認めるものではないため、渡航前に予定する活動を確認しましょう。
将来の日本赴任が見込まれる場合は、初期の計画段階で実現可能性も確認しておきます。赴任自体は後でも、職務内容、雇用関係、現地の事業体制が、その準備に関わってきます。
段階的な進出の例
例えば、海外のソフトウェア企業が、開発チームを海外に置いたまま、顧客へのヒアリングやパートナー候補との面談から始めるケースを考えてみましょう。
日本法人が事業上必要になった段階で、所在地、銀行口座、現地支援の体制とあわせて設立を準備します。同時に、日本の顧客からの問い合わせを誰が担当し、海外チームへどう引き継ぐかを決めます。
その後、技術面の調整や顧客支援などの具体的な必要性に応じて、社員の日本赴任を検討できます。その準備には、適切な在留資格の確認も含まれます。
これは一つの例です。事業によっては、最初から現地人材や専用の事業所が必要になります。実際にどの業務をいつ行う必要があるかを基準に、進め方を考えることが大切です。
事業に合わせて次の一歩を決める
日本でどの程度の体制や人員が必要かは、事業モデルと進出段階によって異なります。事業開始までに何を整え、どのような条件でチームを増員したり、経営陣の日本赴任を検討したりするのかを決めておきましょう。
N&Eコンサルティングは、会社設立や事業運営の準備から、将来の日本滞在に向けた準備、査証・在留資格に関する支援まで、海外企業の日本進出をサポートしています。英語・ドイツ語・日本語で、お客様の事業計画に合わせて各段階を調整します。
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