日本で事業を始める際のバーチャルオフィス、シェアオフィス、専用オフィス、倉庫の4つの選択肢を示す図。

日本での会社設立に向けたオフィスと倉庫の選び方

日本で会社を設立する際、早い段階で検討したいのが、会社の所在地と事業に必要なスペースです。リモートで業務を行うサービス業、現地に営業チームを置く企業、商品を輸入して販売する企業では、必要な環境が異なります。

バーチャルオフィス、シェアオフィス、専用の事務所、倉庫には、それぞれ役割があります。適した組み合わせは、日々の業務、予算、事業に伴う各種要件によって変わります。JETROも会社設立のガイドでオフィス選びを取り上げており、所在地は登記、銀行口座の開設、その他の手続きにも関わります。[1]

常設の執務スペースを必要としない事業にはバーチャルオフィス

バーチャルオフィスは、常設の執務スペースを借りずに、事業用の住所や一部の事務サービスを利用できる仕組みです。運営会社やプランによっては、住所の法人登記への利用、郵便物の受取、電話サービス、会議室の利用などに対応しています。契約に含まれるサービスを具体的に確認することが大切です。[2]

当事務所では、リモートや顧客先で業務を行うことができ、銀行口座、許認可に関する要件にも適合する場合に、選択肢の一つとして検討します。設立当初の固定的な負担を抑えながら、創業者の自宅とは別の事業用住所を確保できる点がメリットです。

契約前には、選んだプランで法人登記が可能かを確認しましょう。官公署からの郵便物や荷物をどのように扱うか、到着後いつ通知されるか、海外への転送に対応しているかも確認が必要です。海外に居住する創業者にとっては、月額料金と同じくらい、重要な郵便物を確実に受け取れる体制が重要になります。

定期的に働く場所が必要な場合のシェアオフィス

シェアオフィスやコワーキングスペースには実際に働くための場所がありますが、その利用形態はさまざまです。オープンスペースの自由席、固定の専用席、サービスオフィス内の個室では、利用できる環境が大きく異なります。

少人数のチームであれば、出社頻度、打ち合わせの回数、必要なプライバシーを基準に比較するとよいでしょう。時々パソコンで作業するには便利な場所でも、機密性の高い電話や機器の保管、日常的な顧客対応には向かない場合があります。

登記用の住所としての利用がプランに含まれているか、自社に割り当てられる区画があるか、利用できる時間帯はいつかを確認しましょう。会議室、利用人数の追加、収納スペースなどの費用も比較に含めます。許認可や在留資格の申請に事務所の条件が関わる場合は、契約前に実際のスペースと契約内容を確認する必要があります。

継続的な事業拠点となる専用オフィス

安定して利用できる場所、機密性を確保できる打ち合わせスペース、機器や製品デモのための場所が必要であれば、専用オフィスを検討する価値があります。サービスオフィスの個室と一般的な賃貸オフィスのどちらでも専用スペースを確保できますが、入居準備の手間や契約の柔軟性には違いがあります。

一般的な賃貸オフィスでは、月額賃料以外の費用も見込んでおく必要があります。JETROの費用試算でも、保証金・敷金、仲介手数料、オフィス設備などが初期費用として挙げられています。金額は物件や契約によって異なるため、費用の全体像が分かる見積もりを取りましょう。[3]

用途の制限、共益費、内装工事に関する条件、更新条件、解約予告期間を確認し、退去時の原状回復の範囲も明確にしておきます。製品の実演や修理、頻繁な荷物の受取を予定している場合は、契約前にその業務内容を貸主に説明しましょう。

商品を扱う事業の倉庫とフルフィルメント

商品を販売する場合は、オフィス選びと並行して、入荷、保管、発送の流れを考える必要があります。オフィスと倉庫は役割が異なるため、従業員が働く場所と在庫を保管する場所を必ずしも同じにする必要はありません。

在庫に直接アクセスする必要がある場合、定期的な検品や修理を行う場合、特別な取扱いが必要な場合には、自社で倉庫を借りる方法が考えられます。搬入のしやすさ、防犯対策、保管環境、梱包や返品処理に必要なスペースを確認しましょう。予定する業務が、物件の条件や契約上認められているかも確認します。

外部の物流会社やフルフィルメントサービスを利用する方法もあります。サービス内容に応じて、商品の保管、注文に合わせた商品の取り出し、梱包、発送、返品対応などを委託できます。例えば、ヤマト運輸は、保管から出荷、返品対応までを含むECロジスティクスサービスを案内しています。[4]

比較する際には、現実的な受注量を想定し、入荷作業料、保管料、梱包費、発送費、返品処理費などを含めた総費用を確認します。特別な管理や取扱いが必要な商品では、委託先が対応できるかに加え、必要となる許認可を誰が取得・管理するのかも明確にしておくことが大切です。

日本市場への参入当初は、小規模なオフィスや条件に合うバーチャルオフィスと、外部の物流サービスを組み合わせる方法も検討できます。会社の住所、働く場所、在庫の保管場所を、それぞれの役割に合わせて選びましょう。

主な選択肢の比較

選択肢検討しやすいケース主な確認事項
バーチャルオフィスリモート中心で常設の作業場所が不要住所の利用条件と確実な郵便物の受取
シェアオフィス個人や少人数チームの作業場所が必要プライバシー、利用時間、プラン内容
専用オフィス常設のチーム拠点や機器の設置場所が必要賃貸に伴う総費用と利用可能な用途
倉庫または フルフィルメント在庫の保管や商品の発送が必要商品の取扱条件と物流全体の費用

法人登記と事業運営上の要件は分けて確認する

ある住所で法人登記ができることと、その利用形態が他のすべての要件を満たすことは別です。物件やサービスを比較する段階で、次の点も確認しておきましょう。

法人口座の開設

バーチャルオフィスを利用していることだけを理由に、日本の法人口座が必ず開設できなくなるわけではありません。GMOあおぞらネット銀行も開設は可能と説明する一方、銀行によって方針や審査が異なるとしています。申込みが受け付けられることは、審査の通過を保証するものではありません。事業内容を具体的に説明できるようにし、銀行が求める資料を準備しましょう。[5]

郵便物の受取方法にも注意が必要です。GMOあおぞらネット銀行は、デビット付キャッシュカードを登録法人住所宛てに、転送不要の簡易書留で送付すると案内しています。銀行の送付条件と、オフィス運営会社の受取手続きが両立するかを確認しましょう。[6]

許認可

JETROの会社設立ガイドでも説明されているように、事業によっては営業開始前に許認可が必要です。[1] 事務所や施設に関する要件がある業種では、契約前に予定するレイアウトや用途について、所管官庁や専門家に確認しましょう。運営会社から「法人登記可能」と案内されていても、業種ごとの要件を満たすとは限りません。

在留資格

在留資格「経営・管理」の取得を予定している場合は、事務所について別途検討する必要があります。出入国在留管理庁のガイドラインでは、継続的に事業を行うための事業所の確保や、契約上の使用権限について示されています。[7] そのため、住所のみを利用するサービスで事業所の要件を満たせると考えて計画を進めるべきではありません。シェアオフィスやサービスオフィスも、名称だけで判断せず、実際の区画、契約内容、利用実態を確認することが必要です。

契約前に最初の一年間の事業運営を考える

まずは、今後一年間の業務を具体的にイメージしてみましょう。従業員が現地で働く頻度、顧客との面談回数、保有する在庫量を見積もります。そのうえで、保証金・敷金、追加サービス、契約終了時の費用まで含め、条件に合う選択肢の総費用を比較します。

会社設立前であれば、最初の契約を誰の名義で締結できるか、設立後にどのように法人へ契約を引き継ぐかも確認しましょう。将来移転する場合には、本店所在地の変更登記や銀行などへの届出・連絡も必要となるため、その手続きも見込んでおくとよいでしょう。

N&Eコンサルティングでは、海外企業の日本での会社設立と、事業開始に向けた実務上の準備をサポートしています。バーチャルオフィスの手配に関する調整や、法人口座開設のサポートにも対応しています。日本進出をご検討の際は、会社の所在地や働く場所の選択を、設立計画全体の中でどのように進めるか、ぜひご相談ください。

参考資料

[1] JETRO — 会社設立のモデルケース解説

[2] ワンストップビジネスセンター — バーチャルオフィスのサービス案内

[3] JETRO — 日本での事業設立に関する費用試算

[4] ヤマト運輸 — 通販物流(ECロジスティクス)

[5] GMOあおぞらネット銀行 — バーチャルオフィスでも法人口座は開設可能

[6] GMOあおぞらネット銀行 — 法人口座の開設と郵送に関する案内

[7] 出入国在留管理庁 — 外国人経営者の在留資格基準の明確化について

参考資料の確認日:2026年10月5日。リンク先の内容が分かるよう、一部の資料名は日本語で説明しています。

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